The Cinema, Actually

あんまり映画の話はしません。

2017年振り返り(映画)

2016年に引き続き,2017年もなかなか映画館に通えなかった.特に下半期.若干の自宅鑑賞を含むが,2017年の新作映画を個人的に振り返ってみる.あらすじ省略&ネタばれ大セールのベスト雑感と見逃し映画について少し.

2017年新作ベスト

1. 垂直のまま / Rester Vertical / Staying Vertical
アラン・ギロディ / Alain Guiraudie, France, 2016

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この映画で描かれているのは,生命の誕生から老い,死であり,「多様性」といった言葉だけでは捉えきれない性の複雑さである.大写しにされる男性器や女性器からは,性よりもむしろ,生のイメージが喚起される.クィア作家として名の知れたギロディだが,本作では人間のセクシャリティの枠組みを超えて,もっとプリミティブな何かを捉えようとしているように見える.基本的に寓話性の強い舞台とプロットであるが,たとえば,一人の老人にとっての過激で崇高な死は,次の日の新聞記事一つであっさりと消費されてしまう.書けない脚本家レオが,そうした社会や共同体から常に距離を置こうともがいているのが印象的だ.幻想的な森での療養のシーンでは自然への回帰を,狼と対峙するラストショットでは動物的なものへの回帰を示唆する.他者との関係性を構築すること,社会に帰属することの困難さを克明に描きつつ,それでも垂直のままに立つことを高らかに肯定する,力強い現代の神話.

2. パーソナル・ショッパー / Personal Shopper
オリヴィエ・アサイヤス / Olivier Assayas, France, Germany, 2016

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スマホメッセンジャーはすっかり画面に馴染み,サスペンスの小道具として機能している.日々グローバルマーケットを飛び回るパーソナル・ショッパーという職業の無国籍さゆえに,クリステン・スチュワートにとっての本来居るべき「居場所」が見当たらない.ここらへんは前作同様,現代の映画を志向しているようにみえるし,その感覚はより洗練されている印象.職業柄,飛行機や電車,バイクと移動手段を替えながら日常的に国境を跨ぐクリステンの姿は,幽霊の越境と侵入という主題にも重なる.余計な謎解きをばっさりと切り捨てたシンプルなストーリーも非常に好感を持てる.クリステンがクライアントの服を着る禁忌を犯す瞬間,その官能さは別の場面でみせるヌードにも勝る.無人のドアの開閉,煙やカーテンなど,幽霊映画としての細部の充実ぶりも楽しい.

3. わたしたちの家 / Our House
清原惟 / Yui Kiyohara, Japan, 2017

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セリが化粧をするシーンの巧みな鏡の用い方,繰り返し挿入されるカーテンの不穏さ,屋内外での縦の構図,あるいは夜の商店街のロングテイクなど,忘れがたい力強いショットはたくさんある.「家」が停電してからはその真髄を見られ,セリの居場所はお構いなしに独りでに廊下を直進しだすカメラに先ずぎょっとさせられ,そこから花瓶がサナと透子のもとへ飛び込むまでの僅か4カットで2つの世界が繋がる瞬間を目撃する.日本家屋の空間的特性を活かしたこの一連のシークエンスは何度見ても素晴らしい.「襖に空いた穴」という古典的なアイディアを事前に提示しつつ,そこからもう1つ高い次元で,映画が2つの世界を自在に行き来できることを示してみせる.透子による地下活動めいた何かや,例の男の正体などは何一つ明かされるないまま,あるプレゼントが再び世界を越境することで終幕を迎える.世界の接続とは別に感動したのがもう1点,クリスマスツリーを手にしたセリが,ジグザグの草叢を抜けた先で目にする海辺の草原はこの世のものとは思えない.

4. 人生タクシー / Taxi
ジャファール・パナヒ / Jafar Panahi, Iran, 2015

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タクシーの車載カメラとiPhoneのカメラのみで構成された,メタにメタを重ねた知的好奇心を擽る傑作.序盤,いかにもウソっぽい乗客の「語り」や「巻き込まれ」が続くが,観客がメタフィクションに慣れ切っていることなどもちろんお見通しであると言わんばかりに,続けて登場するシネフィル青年の客に「パナヒさん,でもこれも映画なんでしょ」とあっさり言及させてしまう.この映画で一番の見どころはやはり映画監督を志す姪っ子のパートだろう.彼女は目の前で起こる出来事にカメラを回す欲望に忠実であり,そこに映っている物事の意味や,それを映画として上映することの意味には無自覚である.学校という機関からの「検閲」された体験を語り,映画の面白さのために演者にヤラセを強いる姪っ子.彼女を通じて,映画の「ウソ」はもちろん,限定された状況で映画を撮ること,それが観客に観られることにまで踏み込んでみせる.自らの置かれた不条理を逆手にとって,こんなにも面白い映画を撮ってしまうその才能に脱帽する.

5. 風に濡れた女 / Wet Woman in the Wind
塩田明彦 / Akihiko Shiota, Japan, 2016

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不穏だがのっぺりした安っぽいSEと,自転車で海に飛び込む女(観てないけど神代のオマージュらしい)による幕開けは,その後の荒唐無稽で破天荒な展開を予見させる.病院の包帯男や棒立ちする劇団員,家の崩壊など,ほんの数カットで笑わせるギャグセンスとカットの繋ぎの洗練ぶりに驚く.指輪や荷台などの小道具の巧さや小気味いい編集のリズムも光る.タイトルとは裏腹に,湿っぽさはほとんどなく,むしろ,からっとしたナンセンスな笑いに満ちている.野外で男と女が体をぶつけ合い,文字通り格闘する絵から生まれる,滑稽さを超えた笑いと感動は,どんな時代性や文脈にも囚われない普遍的なものだ.セックスはセッションでありアクションであると,この映画は明快に教えてくれる.

6. エル ELLE / ELLE
ポール・ヴァーホーヴェン / Paul Verhoeven, France, Germany, 2016

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勧善懲悪だとか,倫理や道徳に基づく原理は一切働かないし,劇中の人物にも内在しているようにも見えない.社会の求める「定型」からは逸脱した人間ばかりが織りなす矢印入り乱れた人間模様は,共感しやすい類の人間模様よりもずっと新鮮で,素直に楽しめるものである.真っすぐにクィア映画ではあるのだけれど,アブノーマルな性癖だとか,抑圧と性といったわかりやすい文脈だけにこの映画を回収してしまうのはあまりにも勿体ない,もっと根深い部分で人間の多様さを捉えているように思う.終盤,吹き荒れる嵐の中で,家中の窓を閉めるという行為をともにすることで,二人と外の世界の断絶をみせる演出も面白い.ラストショットがあの2人の背中を捉えたショットであったことも,個人的な好みにドンピシャで嵌った.ビックリ箱的な音響と演出はやや過剰に感じた.

7. 昼顔 / Love Affairs in the Afternoon
西谷弘 / Hiroshi Nishitani, Japan, 2017

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指と指が接触し,舐めるように絡め合うショットの恍惚さたるや.初めて斎藤工が画面に現れてから,二人の視線が交わるまでの焦らしプレイを経て,伊藤歩がクラクションを鳴らすまでの序盤の展開は非常にスリリング.のっけから目まぐるしい極上の視線劇,クロスカッティングを堪能できる.中盤ややだれるが,宴をきっかけに物語はアクセルを踏み出して,メロドラマからノワール,ホラーへと変調していく.打ちあがる花火とともに終幕へ向かうその速さも素晴らしい.作品を通して,伊藤歩という女優の存在感,特に目力に圧倒される.

8. パターソン / Paterson
ジム・ジャームッシュ / Jim Jarmusch, US, 2016

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愚直に「反復と差異」を積み重ねる姿勢は韻を踏むような詩表現にも通ずるのだろうか.やや浮世離れしたアダム・ドライバー演じるパターソンが目撃する出来事やそこで出会う人々は,どこか既視感を覚えつつも毎日少しずつ異なる.繰り返されるルーチンの中の些細なズレや違和感は,バスに乗る瓜二つな双子の顔であったり,出発前の同僚の声かけであったり,至る所に散りばめられている.淡々とした日常というには金曜日と土曜日の出来事はあまりにもドラマチックで,映画の転調に一役買っている.強烈な印象を与える双子のイメージや,パターソン(アダム・ドライバー)とパターソン(地名)の関係を考えれば,これはひょっとして幽霊映画なのではないかなんて疑問も浮かび上がる.構図でみせる差異の巧さに唸るもよし,美しい詩のリズムや叙情に身を委ねるもよし,とにかく贅沢な映画だ.劇中,パターソンたちがレイトで見ていた『獣人島』(1932)がとても面白そうだった.

9. ローサは密告された / Ma' Rosa
ブリランテ・メンドーサ / Brillante Mendoza, Philippines, 2016

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人工照明もなしに手持ちカメラでここまで夜の映像を撮れるものなのかと,技術の進歩にまず驚いた.序盤からカメラの動線一つで建物の構造や人物の位置関係を提示してみせる.基本的に手持ちカメラは揺れまくり,雑多な喧騒,ノイズを必要以上に拾い上げ,被写体との距離感は非常に近い.こうしたドキュメンタリーのような手触りも,この題材には効果的だろう.そうはいっても手ぶれやノイズ一辺倒というわけではなく,取調室での壁1枚を隔てた密告を巡るサスペンスや,車のフロントガラス越しの捕獲劇など,映像としての面白さも高水準.貧困と密告の連鎖の鎖となる麻薬はもちろんのこと,小道具としてのスマートフォンの役割もかなり面白い.足りないお金を集めるために兄弟たちが奔走することでひとつ,家族のドラマが生まれるが,その先々でもフィリピン社会の暗い側面が次々と映し出される.やっと手にした少ないお金で買った串をムシャクシャと頬張るローサのラストショットは非常に力強く忘れがたい.

10. 甘き人生 / Fai Bei Sogni / Sweet Dreams
マルコ・ベロッキオ / Marco Bellocchio, Italy, France, 2016

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上昇と落下,TV映像とメディア史,母と子,窓とフレーム.どこをどう切り取ってもベロッキオが過去作でも繰り返し扱ってきたモチーフだらけである.別に落下するナポレオン像を見て「これでこそベロッキオだ」といったトートロジーな褒め方をしたいわけではなくて,彼が執着してきたいくつもの主題がうまく絡み合って,一つの集大成として結実したように見える.技巧面やショットの力強さなどはいくつかの過去作の方がずっと上に思えるが,どうしてもベストに入れたかったのはラストの母子のかくれんぼのシークエンスのエモさに思わず涙したからかもしれない.

次点(以下順不同)

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択 / Certain Women
ケリー・ライヒャルト / Kelly Reichardt, US, 2016
どんよりとしたモンタナの寒空の下,女性たちのディスコミュニケーションが主題となるオムニバス.これまたクリステン・スチュワートの登場する第3話が素晴らしい.

未来よこんにちは / L'avenir / Things to Come
ミア・ハンセン=ラヴ / Mia Hansen-Løve, France, Germany, 2016
ELLEと並ぶ今年の2大ユぺ様映画の1つ.ミア・ハンセン=ラヴはまだ若いのに老齢の巨匠みたいな作品を撮るなあ.

皆さま、ごきげんよう / Chant d'hiver / Winter Song
オタール・イオセリアーニ / Otar Iosseliani, France, Georgia, 2015
ショットの連鎖の快楽や,ギロチンに始まる出鱈目さを楽しむ.全編が挑戦的で攻撃的.晩年のオリヴェイラしかり,老人の方が若々しい映画を撮る気がする.

鉱 ARAGANE
小田香 / Kaori Oda, Bosnia & Herzegovina, Japan, 2015
サラエヴォの炭鉱を降りるジェットコースタームービー.少ない素材からよくここまで映画にしたなという感動.

立ち去った女 / Ang Babaeng Humayo / The Woman Who Left
ラヴ・ディアス / Lav Diaz, Philippines, 2016
初めて見たラヴ・ディアス.228分という尺は彼の作品の中では短い方なんでしょう(痛ましき謎への子守歌は500分近くあったはず)が,こういう映画が特集上映とかではなくちゃんと劇場公開されることは素直に喜ばしいことだなと思う.

グッド・タイム / Good Time
サフディー兄弟 / Joshua & Ben Safdie, US, 2017
どうやったって行き場のない,短絡的で向こう見ずな行動の数々が物語をぐんぐん引っ張る.ネオンと過剰な音楽に彩られたドラッギーなストリートムービー.

アイ・イン・ザ・スカイ / Eye in the Sky
ギャビン・フッド / Gavin Hood, UK, 2015
シン・ゴジラよりもずっと面白い管制室映画.典型的なトロッコ問題とドローン軍事利用を真正面から扱うという点も惹かれた.少女に過剰に物語を投影するのはやや醒める.

マリアンヌ / Allied
ロバート・ゼメキス / Robert Zemeckis, US, 2016
クラシカルな視線劇を現代に作る贅沢さよ.吹き荒れる砂嵐の中でのカーセックスは白眉.


2017年見逃しベスト

特集上映で見逃したり,まだレンタルが出ていなかったりで見れなかったのが悔やまれる映画10選.

ジャングルの掟 / La Loi de la jungle / Struggle for Life
アントナン・ペレジャトコ / Antonin Peretjatko, France, 2016
『垂直のまま』と同じくカイエ週間で上映されていた.ギロディにばかり気を取られてこちらを見逃してしまったのが本当に悔やまれる.またどこかでかかるといいな.

サマ / Zama
ルクレシア・マルテル / Lucrecia Martel, Argentina, Spain, 2017
ラテンビート映画祭で上映されていた.時期的に厳しくてなくなく断念した.

暗くなるまでには / Dao Khanong / By the Time It Gets Dark
アノーチャ・スウィチャーゴーンポン / Anocha Suwichakornpong, Thailand, Netherlands, 2016
大阪アジアンで上映されていた.1本も見たことないけどスウィチャーゴーンポンはそのうち特集組まれんじゃないかと密かに期待している.

女神の見えざる手 / Miss Sloane
ジョン・マッデン / John Madden, US, France, 2016

ゲット・アウト / Get Out
ジョーダン・ピール / Jordan Peele, US, 2017

ノクターナル・アニマルズ / Nocturnal Animals
トム・フォード / Tom Ford, US, 2016

春の夢 / A Quiet Dream
チャン・リュル / Zhang Lu, South Korea, 2016

夏の娘たち~ひめごと~
堀禎一 / Teiichi Hori, Japan, 2017

アウトレイジ 最終章 / Outrage Coda
北野武 / Takeshi Kitano, Japan, 2017

予兆 散歩する侵略者 劇場版 / Yocho
黒沢清 / Kiyoshi Kurosawa, Japan, 2017

17/09/05

昨日に引き続き損保のみ
-リスク尺度同士の関係性,コヒーレントリスク尺度の性質など
-複合Poの複合分布は線形性を利用できる
東京行くまでにWBを半分くらいは進めたい
9月中に3科目1周はマスト

S:7h 30/27/35

17/09/04

一般化パレート分布の性質 ${G_{\beta,\xi}}$
ほかにリスク尺度,極値理論,Copula,順位相関係数など
損保6時間ほど

Capinski-Kopp

Marek Capinski and Ekkehard Kopp "Measure, Integral and Probability"

邦訳はAmazonマーケットプレイスで8万超えというバカみたいなプレミア価格になっているのだが、有難いことに原著がネットに転がっていたので読み始めた。

1日2頁ずつくらい読み進められたらいいかな。

$\mathbb{R}$ が非可算であることの証明。対角線論法を知りました。

 

http://dbgroup.nuaa.edu.cn/math/MIP2003.pdf

院試

今の所属の大学院入試は無事合格していたようで、ひとまずほっとしている。

とはいえア試験まで4か月を切っていて、そんなにうかうかしてる時間もない。財政方式がわけわからんです。

7/24 近況

1. UT出願完了

ひとまずUT経研の出願をほぼほぼ完了してようやく一息つけるので、こうしてブログの更新なんてしている。GMATだけは間に合わなかったので出願後別途送付することになるが。GMATはquantが50/51なのでまあ足を引っ張る要素にはならないだろう。verbalのやる気のなさを突っ込まれると返す言葉がないが(下位10パーセンタイルだった)。論文/推薦状なし、研究計画書の添削もなしで外部からの出願という特攻スタイルなので、あとはもう口述試験日までは祈るほかない。9月までは心穏やかでない。

 

2. KU院試対策

UTの研究計画書が完成したのが出願3日前なんて具合なので、KUの筆記対策は全然進んでいない。学部時代の蓄積なんてほぼないようなもんで、過去問を少し解いては教科書にあたりというのを繰り返している。筆記で半分取れないと問答無用ではねられるらしいので、そろそろ本腰入れていかないとまずいが、そんな決意を試験2週間前に言ってて大丈夫なんだろうか。

 

3. ア試験

ちゃっかり3科目の受験料を払ったものの、年金数理なんてまだ教科書を開いてすらいない。一番時間のかかりそうな会計の教科書の精読が2/3終わった程度。損保はまあ例題とリスクセオリーを少しずつ程度。舐めてる。KU筆記終わり次第すぐに取り掛かるべし。

3/30

KKT

投資証券

ひとまず理論編の教科書を半分ほど読み終え、演習で追いかけている。ポートフォリオ問題は落ち着いて立式すれば簡単。数字が面倒なだけでとりたてて高等な計算はない。

 

【院試】H25専門科目のみ 4時間

機H25 この年のはかんたん。ラグラジアンから運動方程式の導出。

流H25 複素速度ポテンシャルの取り扱いがあやふや。ブラジウスの公式。淀み点。留数定理は要復習。ベルヌーイの定理ひさしぶりに触った。

熱H25 偏微分をこねくりまわすだけの定期試験はのりきったものの、定性的に考えさせる問題はてんでだめ。パターン覚えるだけじゃなんとかならないかなあ。

 

TOEFL

SpeakingとWritingのテンプレを作成。例題を見て15+45で即興の練習。全然できないのでとりあえずは口を動かす練習をば。。まだまだ道のりは長い。

単語はRank4の1/3程度をざっと流した。4月中には1周したいところ。